La Salve(ラ・サルベ)醸造所 ― バスク・ビルバオが育んだ伝統クラフトビール
スペイン北部から世界へ。100年以上の歴史を紡ぐ一杯
 スペイン・バスク地方の中心都市、Bilbao(ビルバオ)に、本格クラフトビールの名門醸造所が存在します。その歴史は1886年にまでさかのぼる―それが「La Salve(ラ・サルベ)」です。
その名は街を流れるネルビオン川の松江に架かる「Puente de La Salve(ラ・サルベ橋)」に由来し、港に戻る船乗りたちが祈りを捧げた場所を背景に持つ、地域とのつながりも深いブルワリーです。
1.醸造所の所在地と地域背景
La Salveの醸造所は、スペイン・バスク州ビスカヤ県ビルバオ市内、ネルビオン川河畔に位置します。住所は「Tellería Kalea 31A, 48004 Bilbao, País Vasco」。
ビルバオは近年モダン美術館「Guggenheim Museum Bilbao」の開館で世界的な注目を集めていますが、同時に産業都市としての歴史、港・鉄鋼・造船の文化を抱えています。La Salveのクラフトビール造りも、街の“鉄と水と文化”といった要素をまとっています。
2.創業の歴史と再興の物語
1886年〜1978年:創業と休止まで
1886年、ドイツ系醸造家の息子であるジョセ・シューマン・イ・コルデス(José Schumann y Cordés)が、ビルバオのラ・サルベ地区(川の湾曲部)でビール及び炭酸飲料の醸造許可を申請し、醸造所を設立しました。
20世紀中盤まで成長を続けますが、1978年に一度営業を停止。理由として、立地再開発や設備老朽化など複合的な背景が挙げられています。
2014年〜現在:リブランディングと拡大
2014年8月8日、La Salveは新たな経営陣と地元出資者(Eduardo Saiz Lekue、Jon Ruiz Ibinarriaga等)により“復活”を果たしました。
その後、2017年には大手ビールメーカーMahou San Miguelが株式の約42.9%を取得し、設備・流通体制が強化されました。
この再興により、「ビルバオのビール」としての地位を再確立しつつ、クラフトビール市場においても存在感を示しています。
3.代表的なラインナップとその特徴
La Salveは、クラシックなラガーからモダンなスタイルまで幅広く手がけています。以下をご紹介します。
(1)La Salve Lager(ラガー)
創業期のレシピを踏まえた黄金色のラガービール。モルトの甘みとホップの苦味のバランスが良く、ビルバオの定番とも言える味わい。

(2)La Salve Lucía(ルシア)
アンバーレッド系のラガー。キャラメルモルトを使用し、程よいコクと後味のキレが特徴的です。

(3)La Salve Munich(ミュンヒ)
ドッペルスタイルのチェコ・ドイツ系ビールにインスパイアされた褐色ビール。アルコール度数6.2%程度で、ローストモルトの香ばしさが味わえます。
(4)La Salve IPA
近年のクラフトビールトレンドに応えたIPAスタイル。しっかりとしたホップの香りと苦味があり、モダンな味わいを求めるビール愛好家にも人気です。
(5)限定・スペシャルビール
「Botxo」「Sirimiri」「Txirene」など、地元文化や素材を活かした限定ビールも展開。瓶ラベルのデザインにも注力し、コレクターにも支持されています。
lasalvebilbao.eus
5.日本での入手方法と楽しみ方
日本国内でもLa Salveのビールを見かける機会が増えており、以下の方法で入手できます:
・輸入クラフトビール専門店
・スペイン料理レストランでの提供
・オンラインショップ(輸入酒・クラフトビール系EC)
・海外旅行時のビルバオ現地購入(瓶・缶の持ち帰り対応)
訪問時には、「瓶ラベルを眺める」「ラベルのスタイルを味わう」こともビール愛好家ならではの楽しみです。
6.まとめ:文化と味わいが息づくビール、La Salve
La Salveは、1886年の創業という長い歴史を背負いながらも、2014年に再び息を吹き返した「復活のブルワリー」です。
ビルバオという街の工業的・港町的・文化都市的な多面性を映し込み、「伝統×革新」のバランスをそのビールに宿しています。
ビール好きなら、単なる“飲む”という体験を超えて、「その土地を味わう」「歴史を味わう」一杯としてLa Salveをぜひ楽しんでみてください。スペイン・バスクの風とともに、グラスを傾ける価値があります。
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以下公式サイトもご覧ください。
LaSalve公式サイト
